わたしの本棚

数学の楽しさにふれる五冊ー松田雄馬

「数学」と聞くと、どういうイメージが浮かぶでしょうか。 「私は文系だから…」 「高校の授業についていけなくて、それから触れていないかな…」 などと、敬遠する人が多い一方で、 「数学ができたら、データサイエンスを学んでみたい」 「数学ができる人って、ちょっと憧れるかも」 といった、縁遠い世界だからこそ少し覗いてみたい、といったポジティブな印象を持つ人も少なくありません。 そうはいっても、ほとんどの人にとって、数学は非日常の世界。 そんな、数学の世界を、日常や社会といった観点から垣間見ることで、皆さんの世界を拡げるきっかけにしてほしいと思っています。

文系にも理系にも、数学的センスが磨かれる一冊

まるさんかく論理学 数学的センスをみがく

野崎昭弘

中央公論新社

ISBN: 9784122070813

『まるさんかく論理学 数学的センスをみがく』野崎昭弘/中央公論新社

数学的センスがあれば、世界が違ってみえる。 ビジネスの第一線で数学を駆使して活躍するデータサイエンティストの頭の中、 そのヒントは、私たちの日常に隠れています。 鏡はなぜ左右は入れ替わるのに上下を逆さに映さないのか? 五対五の男女から理想のペアをどう見つける? 本書は、東大・京大をはじめ難関大学を志望する多くの受験生が学ぶZ会から出版された名著(現在は中公文庫から出版されています)。 身近な題材を使ったクイズを読み進めることで、数学的センスを自分のものにできるかも!?

奥が深い数学の歴史を、マンガで手軽に!

マンガ おはなし数学史 : これなら読める!これならわかる!

仲田紀夫,佐々木ケン

講談社

ISBN: 9784062573122

『マンガ おはなし数学史 : これなら読める!これならわかる!』仲田紀夫、佐々木ケン/講談社

その歴史を学べば、難しいことが不思議と簡単に見えてくる。 これは私の持論です。 どんなに難しい概念も、それを考えた「最初の人」がいます。 そしてそれらの多くは、その時代、その文化のなかで、何らかの必要があって、考え出されたものばかりです。 高校や大学で、突然現れた難しい数学にアレルギー反応を起こして、 そこから数学と疎遠になった人も多いはず。 ですが、数学は、それが生まれた歴史を知ると、意外なほどに楽しめるものです。 逆に、数学自体は好きでも、歴史となるとよくわからないという人も多いはず。 数学が得意な人のなかにも歴史が苦手という人は少なくありません。 もし、数学好きな人が歴史を知ると、今まで知らなかった数学の概念がわかり、 さらに一歩、理解が深まることも。 本書は、難しく見える数学とその歴史を、マンガで楽しく解説したものです。 文系の人も理系の人も、こちらを手に取って、新しい教養に触れてみてはいかがでしょうか。

マンガでわかる、未来を予測する数学

マンガでわかる微分方程式

佐藤実,あづま笙子

オーム社

ISBN: 9784274067860

『マンガでわかる微分方程式』佐藤実、あづま笙子/オーム社

お金の動きや人の動きが予測できれば…。 株式投資を行っている人でなくとも、何らか、未来の動きを予測したい、と考えたことのある人は少ないはず。 社会の裏側では、「微分方程式」という数学が、 さまざまな「動き」を予測しています。 そんな「微分方程式」、興味のある人が少なくないなかで、 ほとんどの本は、難しい数式が呪文のように並び、読み解こうとする前に挫折してしまいます。 本書は、未来を予測する魅力的な数学である微分方程式を、 マンガで楽しく解説した一冊。 ぜひ楽しく読み進めながら、数学という教養の実用への第一歩を踏み出してみては。

データサイエンスのはじまりを知り、先人たちに想いを馳せる

統計の歴史

オリヴィエ・レイ

原書房

ISBN: 9784562057412

『統計の歴史』オリヴィエ・レイ/原書房

絶対王政の終わりとともに、統計の時代がはじまった。 統計は、これまでの「国王」という絶対的な存在がなくなり、人々が拠り所を求めた結果、ようやく辿り着いたものでした。 人々の生活を圧迫する国王という絶対的な権力さえいなくなれば。 そう思って国王を妥当した国民に待ち受けていたのは、秩序が崩壊した混沌とした社会でした。 そのとき、人々は統計に何を求め、どんな発見を積み重ねていったのか。 データ社会の今、欠かすことのできない「統計」の、他では語られない奥深さを知る貴重な一冊です。

理系の研究者がこっそり読んでいる、数学を直観的に知るバイブル

物理数学の直観的方法 理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬

長沼伸一郎

講談社

ISBN: 9784062577380

『物理数学の直観的方法 理工系で学ぶ数学 「難所突破」の特効薬』長沼伸一郎/講談社

大学受験という難関を突破し、意気揚々と講義に臨む理系大学生。 そんな彼らに、大学教授たちは容赦なく洗礼を浴びせます。 特性方程式、イプシロンデルタ・・・ 呪文のような謎の数学用語の数々。 そんな苦い経験を持つ著者は、何とかして難解な大学数学を直観的に説明する方法はないものかと悪戦苦闘しました。 そして、自費出版した本が、まさかの理系研究者の間でヒットし、 講談社で「普及版」として再び世に出たのがこの本です。 理系大学生や大学院生はもちろん、 数学に興味を持つすべての人に、ぜひチャレンジしていただきたい一冊です。

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おわりに

いかがでしたか? 数学の世界が、意外なほど日常と密接なかかわりがあること、 そしてそれ以上に、今の社会の基礎になっていることが垣間見えたのではないでしょうか。 この他にも、数学に関する本には、素敵なものが数多くあります。 ここで興味を持ったら、実際の書店に足を運んで、 数学の棚にある本を手に取ってみましょう。 きっと、あなたにピッタリの一冊がみつかるはず。 その一冊を片手に、好きな場所で、好きな音楽を聴きながら、 自由に数学の世界を歩いてみてください。 そんな時間が、あなたの人生に彩りをもたらしてくれるはず。

著者 プロフィール

松田雄馬

株式会社オンギガンツ代表取締役、大和大学特任教授。京都大学大学院卒業後、NEC中央研究所にてオープンイノベーションを推進。MITメディアラボ、ハチソンテレコム香港、東京大学との共同研究を経て、東北大学と共同でAI研究を立ち上げ、博士号を取得した後、独立。技術開発・人材育成・組織開発の三方から、DXに取り組む企業の経営戦略策 定・実行を支援。デジタルテクノロジーとともに生きる豊かな未来を創造するための 情報発信としてテレビ・ラジオにも出演し、多数の著作を執筆。

2025年6月20日 更新

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