人生を彩る本棚

疲れを癒やす、健康と睡眠の本5選

現代人にとって「疲れ」は切っても切れない悩みの種です。慢性的な疲労感、寝ても取れない倦怠感、ストレスや不規則な生活による体調不良——。そんな日々の不調に対し、私たちができる最もシンプルで根本的な対策が「休養」と「睡眠」です。しかし、ただ寝ればいい、休めばいいというものではありません。質の高い休養と正しい睡眠の知識を得ることで、心身のリズムを整え、毎日を健やかに生きる力が養われます。

今回は健康と睡眠について役立つ書籍を5冊ご紹介します。忙しい毎日の中でも、自分自身を丁寧にいたわるヒントがきっと見つかるはずです。

1.『休養学 あなたを疲れから救う』(片野秀樹・東洋経済新報社)

休養学 あなたを疲れから救う

片野秀樹

東洋経済新報社

ISBN: 9784492047484

科学的な「休み方」を学ぶ、新しい教養

「休むこと」には、実は技術がある――本書『休養学』は、まさにそんな視点から「疲労」と「回復」に科学的にアプローチした一冊です。著者の片野秀樹氏は、アスリートのパフォーマンスや働く人の健康管理を専門とする研究者。スポーツ医学や生理学の知見をもとに、“疲れにくい体”と“回復しやすい習慣”を作る方法を紹介しています。

多くの人は「睡眠」や「休日の過ごし方」が不十分で、「疲れの貯金」を増やしてしまっているそうです。休養には「積極的休養(アクティブレスト)」と「消極的休養(パッシブレスト)」があり、そのバランスが重要だという指摘は目から鱗。読者は、「休むこと」=「何もしないこと」ではないという事実に気づかされるでしょう。

例えば、軽いストレッチや短時間の運動が心身の回復を促すこと、また、目や脳を休める「静かな時間」を持つことの重要性など、すぐに実践できるヒントも豊富に紹介されています。まさに、忙しいビジネスパーソンや、疲れやすさを感じているすべての人に読んでいただきたい一冊です。

2.『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』(豊島大輝・すばる舎)

しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術

豊島大輝

すばる舎

ISBN: 9784799112861

日常の中で“リトリート”を実現する方法

リトリートとは、「日常から離れ、心と体を癒すための時間を持つこと」。これまで一部の人だけが体験する特別なものという印象もありましたが、本書の著者・豊島大輝氏は、「誰でも日常の中でリトリートを実践できる」と語ります。

本書は、日々の生活の中に小さな“リトリート空間”を取り入れる方法を、具体的に紹介しています。たとえば、朝のコーヒーを飲む時間を“心のリセットタイム”にしたり、週に一度はスマホを手放して“感覚を休める日”を設けたりと、忙しい人でも手軽に取り組める内容が魅力。

また、著者自身が体調を崩した経験からたどり着いた「疲労回復のためのライフデザイン」が語られており、その真摯な言葉は読者の心にも深く響きます。睡眠や栄養、思考パターンなど、多角的なアプローチで「疲れを取る」だけでなく、「疲れにくい体と心を育てる」ことの大切さを教えてくれる一冊です。

“頑張ることが美徳”とされがちな現代において、「意識的に休む」ことの意味を再認識させてくれる本書。毎日に追われがちな人にこそ、ぜひ手に取っていただきたいです。

3.『Tarzan特別編集 自律神経を整える。増補版』(小林弘幸・マガジンハウス)

Tarzan特別編集 自律神経を整える。増補版

小林弘幸

マガジンハウス

ISBN: 9784838757398

健康のカギは「自律神経」にあり

「なんとなく不調が続く」「疲れやすく、気分も落ち込みがち」。そんな慢性的な不調の原因として近年注目されているのが、「自律神経の乱れ」です。小林弘幸氏の著書『決定版 自律神経を整える。』は、医師として多くの患者を診てきた著者が、自律神経の基本から具体的な整え方までを丁寧に解説しています。

交感神経と副交感神経のバランスが乱れると、睡眠の質の低下、免疫力の低下、便秘や冷えなど、さまざまな症状が現れます。本書ではその改善のために、深呼吸・入浴法・朝の過ごし方・夜のルーティンなど、生活の中で無理なくできる“整え習慣”が紹介されています。

特に印象的なのは、「夜寝る前に副交感神経を優位にする」工夫です。照明の色や食事のタイミング、スマホの使い方に至るまで、細かなポイントが豊富に載っており、実践すれば確実に睡眠の質が上がると感じさせてくれます。

「睡眠が浅い」「朝から疲れている」といった悩みを持つ方は、この本で“体のスイッチ”の入れ替え方を知ることができるでしょう。睡眠と自律神経の密接な関係を理解することで、心身ともに安定した日々を手に入れるきっかけになります。

4.『スタンフォード式最高の睡眠』(西野精治・サンマーク出版)

スタンフォード式最高の睡眠

西野精治

サンマーク出版

ISBN: 9784763136015

睡眠研究の最前線から生まれた“90分の奇跡”

日本で睡眠の質に悩む人々の間でベストセラーとなった本書は、世界屈指の睡眠研究機関・スタンフォード大学で長年研究を続けてきた西野精治氏による一冊。最も特徴的なのは、「最初の90分」が睡眠の質を決める、というシンプルで強力なメッセージです。

本書では、なぜ最初の90分が重要なのか、どうすればその時間に深いノンレム睡眠を得られるのかが、科学的に明快に語られています。そのための具体的な方法として、就寝前の体温調整(入浴のタイミングや室温調整)、夕食の摂り方、カフェインとの付き合い方などが紹介されています。

また、脳と身体の“スイッチ”を切り替える準備の重要性が繰り返し強調されており、読者は「眠る前の90分が、翌日のパフォーマンスを左右する」と気づくはずです。

ビジネスパーソンだけでなく、学生や主婦など、日々の活力を求めるすべての人にとって、“本当に質の良い眠り”とは何かを教えてくれる一冊。科学的裏付けに基づいたアプローチだからこそ、納得して実践に移しやすい内容となっています。

5.『今さら聞けない 睡眠の超基本』(柳沢正史・朝日新聞出版)

今さら聞けない 睡眠の超基本

柳沢正史

朝日新聞出版

ISBN: 9784023334090

睡眠の「なぜ?」をゼロから解き明かす

「睡眠はなぜ必要なの?」「何時間寝ればいいの?」「昼寝っていいの?」――そんな素朴な疑問に、第一線の研究者が丁寧に答える入門書がこちら。著者は世界的に知られる睡眠研究者・柳沢正史氏。ノーベル賞にも近い業績を持つ彼の言葉だからこそ、内容に深みと信頼感があります。

本書は、「知っているようで知らない睡眠の基本」を徹底的にわかりやすく解説しており、子どもから大人まで、誰でも理解しやすい構成になっています。「睡眠のリズム」「光と眠気の関係」「成長ホルモンの分泌」など、理論と実践がバランスよく盛り込まれており、読みやすさと情報量の両方を兼ね備えた良書です。

特に「睡眠負債」という考え方は、現代人にとって非常に重要なポイント。短時間睡眠を続けることでじわじわと体や脳に悪影響が出ること、その蓄積が生活習慣病の引き金になる可能性があることなどが、明快に示されています。

これから睡眠について学びたい人、あるいはこれまでの知識を整理したい人にとって、まさに“基本のき”となる一冊。忙しい現代人こそ、この本で「良い眠りとは何か?」を改めて考えてみてはいかがでしょうか。

おわりに

「健康のために、よく眠りなさい」とは昔から言われる言葉ですが、現代人ほどその意味を実感しにくい時代はないかもしれません。スマートフォンやSNS、仕事や家事に追われて、つい後回しにしてしまいがちな“休養”と“睡眠”。しかし、それこそが私たちの身体と心を回復させ、明日を元気に生きるための土台です。

今回ご紹介した5冊は、いずれもその回復力を取り戻すためのヒントが詰まった一冊です。生活の中で取り入れやすい実践的な知恵と、科学的な裏付けに支えられた内容は、どんなライフスタイルの方にもきっと役立つはずです。

「しっかり休んで、深く眠ること」は、最高の自己投資。ぜひ店頭で手に取っていただき、日々の生活に“本からの休養”を取り入れてみてください。

2025年5月30日 更新

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睡眠とは挑戦するための武器である。ー矢間あや

「カラダを変えれば、眠りも変わる」理学療法士としての経験を活かし「眠れるカラダ」をつくる独自メソッドを提案する矢間あやさん。企業の課題も個人の健康も、根本から見直すアプローチでサポートしています。

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