本を読んでいる時にページをめくる手が止まらなくなり最後まで読まないと気が済まなくなったことはありませんか?謎解きや笑いや冒険など驚きに満ちた本がたくさんあります。手に汗握って息をのみ徹夜してしまうこともあるかもしれません。そんなワクワクやドキドキをお届けするのが「ワンダ?ワンダ!」レーベルです。
『ボッコちゃん』星新一/新潮社
星新一さんはショートショートで知られるSF作家で小松左京さん、筒井康隆さんの3人で「SF御三家」と呼ばれます。当用漢字しか用いない平易な文章、時事風俗や固有名詞、性や殺人を描かない透明感のある作風は特に小中学生の子供たちに支持され「ショートショートの神様」と呼ばれました。本書は著者自選のショートショート集でミステリー、SF、ファンタジー、寓話など幅広い多様な作品が収められています。各話が余韻を残して終わるので、その後どうなるか考えるとゾッとしてしまいます。解説は筒井康隆さんです。(R.S.)
読み返しても面白い、色褪せない星新一の世界。年代問わず楽しめます。(K)
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『黒後家蜘蛛の会 1』【新版】アイザック・アシモフ/東京創元社
『下山事件』柴田哲孝/祥伝社
下山事件は1949年に国鉄総裁の下山定則が出勤途中に失踪し翌日に轢死体で発見された事件で未解決事件です。下山事件から約1ヵ月の間に国鉄に関連した三鷹事件、松川事件が発生し、3つの事件を合わせて「国鉄三大ミステリー事件」と呼ばれことがあります。
時の権力者に右派、左派、GHQ、諜報機関やフィクサーなど登場人物が多く、沢山の関係者が複雑に絡み合った事件だということが、読み進めていくうちにわかってきます。自分の国の重く、深く、暗い闇を知ることに躊躇してしまいそうになります。ノンフィクションなのですがミステリー小説のような面白さがあります。本書は第59回日本推理作家協会評論その他の部門賞と第24回日本冒険小説協会大賞実録賞を受賞しています。(R.S.)
国鉄3大ミステリー事件として知られる下山事件。著者の近親者からの証言によって明らかになる事件の詳細から目が離せなくなります。(M.Y.)
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『桶川スト−カ−殺人事件』清水潔/新潮社
『予告された殺人の記録/十二の遍歴の物語』ガブリエル・ガルシア=マルケス(著)、野谷文昭(訳)、旦敬介(訳)/新潮社
本書では中編1話と短編12話と様々な角度からガルシア・マルケスを堪能することができます。緻密な構成、豊かな語彙と表現は、読み手を飽きさせることを知りません。「予告された殺人の記録」はマジックリアリズムはやや薄味でひたすら淡々と過去に起こった事実が記され「予告された殺人」がルポルタージュ風に描かれます。どの話もその発想力には脱帽するしかなく、読者は誰も見たことのない世界へ、領域へ連れていかれます。ノーベル文学賞受賞作家による物語の力は尋常ではありません。(R.S.)
不条理、所謂”バッドエンド”と呼ばれるような話が多くただ幸せな世界に没頭したい方にはあまりお薦めできない。しかし世の中は華々とした人生を謳歌するだけではないのだとこの一冊で思議してみるのも良いと思う。(N)
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『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア・マルケス/新潮社
『こいわずらわしい』メレ山メレ子/亜紀書房
著者のメレ山メレ子さんは会社員の傍ら昆虫や旅をテーマに執筆するブロガーでエッセイストです。青森県の鰺ヶ沢を旅した時に見かけた犬を「わさお」と名付けてブログで紹介したところブサかわ犬として全国的に有名になりました。本書は秀逸な題名ですが、著者によると、 恋愛のいいところも悪いところも書いてある。恋愛したいような、したくないような、揺れ動く心情を表したいなと考えた結果、「恋わずらい」と「わずらわしい」のダブルミーニングである『こいわずらわしい』になりました。 とのこと。恋愛に関する様々なエピソードがユーモラスに綴られていて面白くて笑ってしまいます。(R.S.)
昆虫の本を出されたり、昆虫のイベントをされたりしておられるからかサシガメがアリを捕食するためおびき寄せるテクニックを恋の魅了と例えるあたり、ステキです!(A.G.)
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『そういうふうにできている』さくらももこ/新潮社
『死刑にいたる病』櫛木理宇/早川書房
かつては優しいパン屋の店主だった連続殺人鬼から大学生の主人公の元に手紙が届きます。「最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」。事件を再調査する主人公に殺人鬼の人の心をじわじわと支配していく力が影響を及ぼしていきます。物語へ引き込む力が強く伏線回収も見事で完全に騙されてしまいます。なお本書は文庫化される際に「チェインドッグ」から「死刑にいたる病」に改題されました。(R.S.)
言葉を信じてしまうことによる思い込みの怖さがじわじわと来る作品です。(Y.M.)
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『向日葵の咲かない夏』道尾秀介/新潮社
『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』若林正恭/KADOKAWA
お笑いコンビオードリーの若林正恭さんのエッセイです。自意識過剰なところ、ネガティブなところ、不器用なところが面白おかしく書かれています。若林さんはこの後2017年に刊行されたキューバへの旅のエッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』で旅にかかわる優れた著作を表彰するために創設された第3回斎藤茂太賞を受賞しています。(R.S.)
こういう考え方の人って口には出さないだけで多い気がします。私は共感しかありませんでした。(S.H.)
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『恋文の技術』森見登美彦/ポプラ社
『慟哭』貫井徳郎/東京創元社
本書は貫井徳郎さんのデビュー作です。幼女連続誘拐事件を追う捜査一課長と、新興宗教にのめり込んでいく人物と交互に物語が進んでいき、そのプロットと筆力と叙述トリックに「恐れ入りました!」と言うしかないと思います。(R.S.)
スッキリ感は全くありませんが、濃厚な後味の悪さがあります。しかし、病みつきになります。著者の名前を世に知らしめた鮮烈なデビュー作です。(T.N.)
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『白夜行』東野圭吾/集英社
『桜ほうさら 上・下』宮部みゆき/PHP研究所
父の汚名をそそぐため江戸にでてきた若侍のミステリアスで温かい青春時代小説です。人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさが心に沁みる物語だと思います。(R.S.)
父の死、母兄との蹉跌、藩の陰謀、ドロドロとした内容かと思いきや主人公の少年の純粋な言動によって爽やかな読後感となっています。(Y.S.)
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『火車』宮部みゆき/新潮社
『震える牛』相場英雄/小学館
2年前に起こった未解決強盗殺人事件を調べる刑事と、地方都市の商店街をシャッター街に変えながら発展する巨大スーパーを追う女性ライター。この2人の執念の捜査と取材が結びついて事件の真相が明らかになります。泥臭い社会派警察小説ですがバラバラに思えたキーワードが繋がっていく後半は一気読みしてしまいます。(R.S.)
私はあまり想像力が豊かではないので、どちらかというと社会派の小説でとても分かりやすく、ちょっと怖い本をよく読みます。この本のようにリアルに起こっている社会問題や事件を題材にしている本を現実とリンクさせるといった読書の愉しみ方もあるのではないでしょうか。(Y.S.)
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『飼い喰い』内澤旬子/角川文庫
『グリーン・レクイエム 新装版』新井素子/講談社
新井素子さんは高校生でデビューし、1981年に大学在学中に発表した「グリーン・レクイエム」で第12回星雲賞日本短編部門を受賞しました。当初はSFを中心に執筆していましたが、その後活動の場をジュニア小説へも広げました。その文章は後のライトノベルの文体に少なからず影響を与えたと言われています。一度トークイベントを行って頂いた際にお会いしたことがありますが、とても優しくて面白くて素敵な方でした。本書は表題作を入れて三篇が収録されており想像力の豊かさと淡く切ない思いに心揺さぶられます。(R.S.)
子どもの頃、森で出会った信彦と明日香は、18年後再会。お互い相手を意識する二人。しかし、明日香には、彼女も知らない秘密と封印された悲しい記憶があった。明日香に迫る危機。信彦は明日香を連れて逃避行へ。そして、二人が出会った森で物語はクライマックスを迎える。SF作家新井素子の代表作。(H.F.)
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『マイナス・ゼロ』広瀬正/集英社
2025年10月29日 更新