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心にグッとくる!【Part4】

本には読んでいる人の心を揺り動かす力があります。心が揺さぶられたり、思わず涙腺が緩んでしまったり、一生に一度出会えることが奇跡のような本を集めたのが「グッとBook!」レーベルです。

『猫の客』平出隆/河出書房新社

猫の客

平出隆

河出書房新社

ISBN: 978-4-309-40964-1

夏目漱石の「吾輩は猫である」を代表とする猫文学という流れがあるのでしょうか、それとも作家は猫を題材に書きがちなだけなのでしょうか。本作は庭を通って我が家を訪れる隣家の猫との交流を描いています。落ち着いた雰囲気で心地よく味わい深い作品です。(R.S.)

夫婦が住む借家に隣家の猫チビが訪ねてくるように。あくまでさりげなく人の懐に入り込んでくるのが猫。夫婦と猫の心温まる物語。(K.M.)

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『猫語の教科書』ポール・ギャリコ/筑摩書房

『素敵な日本人』東野圭吾/光文社

素敵な日本人

東野圭吾

光文社

ISBN: 978-4-334-79002-8

本書は日本人に馴染み深い四季折々の行事を題材にした4編と、異色のミステリ5編の9編を収録した東野圭吾さんの短編集です。ミステリ要素は少ないですが予想がつかない展開に引き込まれます。日常の中にある不思議そうなことを題材にしていて、東野さんの長編は読んだことがあるけれども短編を読んだことがない方におすすめです。(R.S.)

大好きな作家の1人「東野圭吾」氏の短編集。短編集なので、さくっと読めるのも良い。一番のお気に入りは「十年目のバレンタインデー」女刑事の十年分の思いを込めた祝杯が実に清々しい。(Y.S.)

■こちらの本をご覧になった方へのおすすめ
『秘密』東野圭吾/文藝春秋

『しずかな日々』椰月美智子/講談社

しずかな日々

椰月美智子

講談社

ISBN: 978-4-06-276677-7

本書は2006年に刊行され第45回野間児童文芸賞と第23回坪田譲治文学賞を受賞した名作です。小学校5年生のえだいちは勉強もスポーツも得意ではありません。5年生になってクラス替えがあって押野という友だちができます。そして彼の人生は変わっていきます。劇的な何かがあるわけでもなく題名のとおりしずかな日々が淡々と描かれていきます。井上陽水さんの「少年時代」を聴きながら読むのがおすすめです。(R.S.)

1人の少年の日常を淡々と描きながらじんわりくる物語。自分の小学生時代を振り返りたくなる。(K.I.)

■こちらの本をご覧になった方へのおすすめ
『横道世之介』吉田修一/文藝春秋

『工場夜景』工場ナイトクル−ズ/二見書房

工場夜景

工場ナイトクル−ズ

二見書房

ISBN: 978-4-576-14132-9

小学生の時に社会科で「工業地帯」という地域があることを習い「コンビナート」という呼び方も覚えました。人に観られることを想定して作られていない工場ですが、いつの頃からか「工場萌え」という言葉が現れ、工場夜景を愛する人が増えているそうです。「工場萌え」のポイントとしては神奈川県川崎市、北海道室蘭市、三重県四日市市、福岡県北九州市、山口県周南市、兵庫県尼崎市、静岡県富士市の7都市がよく知られており、中でも神奈川県川崎市の日本触媒川崎製造所は愛好者の聖地とされています。工業都市はこれまで環境が悪いといったイメージがありましたが旅行会社も工場を洋上から観ることができる観光クルーズなどの商品を打ち出しています。工業都市にとっては観光業振興の新たな道なのかもしれません。幻想的で近未来的で映画の「メトロポリス」のような感じがします。(R.S.)

工場夜景。川崎・北九州・四日市などなど。なんでこんなに美しいのでしょう。説明不要ですよね?うっとりひたってくださいまでせ。(T.K.)

■こちらの本をご覧になった方へのおすすめ
『ビートルズ全詩集』ビートルズ/ソニー・ミュ−ジックパブリッシング

『線は、僕を描く』砥上裕將/講談社

線は、僕を描く

砥上裕將

講談社

ISBN: 978-4-06-523832-5

本書は2020年の本屋大賞で第3位に入りました。著者の砥上裕將(とがみひろまさ)さんは本書で第59回メフィスト賞を受賞して小説家としてデビューしましたが水墨画家でもあります。両親を交通事故で亡くして喪失感の中にあった大学生が主人公です。ある日アルバイト先で水墨画の巨匠と出会い、水墨画に戸惑いながらも魅了されていきます。水墨画を題材にしながら主人公が自分を取り戻していく青春小説ともいえます。(R.S.)

「形ではなくて、命を見なさい」水墨画を通し自分と命と向き合う物語。白紙に墨で描かれる世界が言葉の力で美しく深く彩られて「見える」!終始読者の心を惹きつける魅力を持つ芸術と心の一体化を描く圧巻の物語。(I)

■こちらの本をご覧になった方へのおすすめ
『流浪の月』凪良ゆう/東京創元社

『横道世之介』吉田修一/文藝春秋

横道世之介

吉田修一

文藝春秋

ISBN: 978-4-16-766505-0

吉田修一さんは2002年「パークライフ」で第127回芥川賞を受賞しました。「ランドマーク」の刊行記念の際に吉田さんのサイン会を開催させて頂いたと記憶しております。吉田さんが凄いのは純文学と大衆小説の両方を書けることと何といっても作風が一定ではないことでしょうか。その最たるのが映画にもなった「悪人」です。映画は主演の深津絵里さんがモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞したことで有名です。本書はバブルの時代に長崎から東京へ上京してきた18歳の青年の1年間が描かれている青春小説です。穏やかで優しい物語で登場人物も純朴で真っすぐです。映画化もされています。(R.S.)

隙だらけのまま上京してきた世之介を、人生のダメな時期真っ只中の世之介を、愛さずにはいられなくなる一冊。真っ直ぐな人間の強さと輝きが、仲間たちの心に残り続ける。そして物語に並走し続ける切なさの正体は、私たちが知っているあの「青春」というやつのままならなさだ。(T)

■こちらの本をご覧になった方へのおすすめ
『みかづき』森絵都/集英社

『素粒子』ミシェル・ウエルベック(著)、野崎歓(訳)/筑摩書房

素粒子

ミシェル・ウエルベック(著),野崎歓(訳)

筑摩書房

ISBN: 978-4-480-42177-7

性欲に取りつかれた国語教師の兄のブリュノ、科学者として研究に没頭する生真面目な弟のミシェル。対照的な異父兄弟のお話ですが、フランスではこれが普通なのかと思うくらい登場人物が性に奔放で性描写が多い作品です。賛否両論あり傑作という方と駄作という方にわかれるかもしれません。本書は現代の人間の孤独を描いていると私は思います。(R.S.)

誰もがひとりであり、繋がれないということをこれでもかと突き付けてくる。心や体は勿論、血だってあてにならない。人間の幻想を打ち砕く一方、孤独で仕方ないと開き直れる救いも与えてくれる。オチもすごい。(S.S.)

■こちらの本をご覧になった方へのおすすめ
『隔離の島』ル・クレジオ/筑摩書房

『隔離の島』ル・クレジオ(著)、中地義和(訳)/筑摩書房

隔離の島

ル・クレジオ(著),中地義和(訳)

筑摩書房

ISBN: 978-4-480-43681-8

ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオは1940年生まれのフランスの作家です。1963年に「調書」でデビューし、若い頃は長身と美貌でメディアからも注目を浴びたそうです。その後中南米文化に傾倒し、2008年に「断絶、詩的な冒険、そして官能的な悦楽の作家。支配的な文明との枠を越え、またその裏をかいて人間性を追究した」という理由でノーベル文学賞を受賞しています。異なる時代の物語が語られたり、植民地政策やランボーなどについての知識も必要で、本書を読むには少し労力が必要かもしれません。フランスからモーリシャスへ向かう船内で天然痘が発生して乗客たちは島に隔離されることになります。死と隣り合わせの極限状態を生きる船の乗客たち。豊かで複雑な厚みのある人間ドラマが心を打ちます。(R.S.)

物語は19世紀末、モーリシャス島へ向かう船内で天然痘が発生し、ある小さな島に隔離されたことからはじまる。舞台も時代も背景も全く現代とはかけ離れたものに思われるが、コロナ渦を生きる現代の我々が共感できる描写ばかり。ノーベル賞作家として名の知れたル・クレジオの90年代の名作である。(K)

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「百年の孤独」 ガルシア・マルケス著

『みかづき』森絵都/集英社

みかづき

森絵都

集英社

ISBN: 978-4-08-745806-0

森さんは「風に舞いあがるビニ-ルシ-ト」で第135回直木賞を受賞していますが、絵本の原作や児童読物など子供向けの作品もかなりあります。辻村深月さんと同じく中学受験する小学生に人気があり「カラフル」「クラスメイツ<前期>「クラスメイツ<後期>」などが塾の先生のおすすめになることが多いです。本書は塾経営の3代に渡る波乱万丈の大河小説です。教育という堅いテーマながら心が躍り熱気に当てられます。(R.S.)

戦後から平成にかけての私塾経営をめぐる親子三代の大河。すぐに人様に薦めたくなるので、この際自宅に2、3冊常備しようかと思っている。(T)

■こちらの本をご覧になった方へのおすすめ
『島はぼくらと』辻村深月/講談社

『ハニー ビター ハニー』加藤千恵/集英社

ハニー ビター ハニー

加藤千恵

集英社

ISBN: 978-4-08-746490-0

著者の加藤さんは高校在学中の17歳の時に短歌集「ハッピーアイスクリーム」を発表して歌集としては異例のベストセラーとなりました。しばらく経つと小説を発表するようになり、本書はその最初の頃の短編集です。表紙のイラストは漫画家のおかざき真里さんによるものでその美しさにハッとします。サラッとした歌人ならではの美しい言葉遣いで9編の短編集が綴られています。個人的にはハニーよりビターなお話の方が多い気がします。(R.S.)

ほろにがい恋愛短篇集。会話のテンポ、言葉選びのセンスにひれ伏すことしかできません。味のしなくなったガムを味わう度に思い出す作品です。(N.K.)

■こちらの本をご覧になった方へのおすすめ
『流れ星が消えないうちに』橋本紡/新潮社

2025年11月21日 更新

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