









本は発売後時間が経つと売行が落ちる場合が多いですが、何年もの間ずっと売れ続けている本もあります。数多のロングセラーの中から実際に読んでお客様に自信をもってオススメできると思った選りすぐりの1冊が「ロング・ロング・ロングセラー」レーベルです。三省堂書店スタッフのおすすめコメントとともにご紹介。ぜひ日々の本選びにお役立てください。
『そういうふうにできている』さくらももこ/新潮社
本書は著者の妊娠・出産の体験エッセイです。視点が面白いなあとか言葉選びのセンスに感心しているうちにいつのまにかさくらももこワールドに取り込まれていきます。さくらももこさんのエッセイは軽妙でちびまるこちゃんらしいユーモアがありますが、時折著者の哲学的思考などが表現されていて深い味わいがあります。(R.S.)
妊娠中の友人へプレゼントし、自身も一緒に読んだ一冊。さくらももこさんは期待を裏切らない!セキララなことが素敵で面白くて、でも痛かったり辛かったりもある。そういうふうに自分も生まれてきたのかな?と家族と話したくなる一冊。(Y.S.)
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『日日是好日』森下典子/新潮社
『沈黙』遠藤周作/新潮社
本書はキリシタン迫害の物語で、何故神はいかなる時でも沈黙しているのかをテーマに信仰とは何かを投げかけた問題作です。洗練された文章と構成、読者を惹きつける筆致は圧巻で狐狸庵先生の小説が抜群に面白いことがわかると思います。(R.S.)
ドラマチックで読者をぐいぐい引き込みつつ、「日本人にキリスト教必要なの?」「神様っているの?」「宗教って人間に必要なの?」と考えさせられる1冊です。(T.K)
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『船乗りクプクプの冒険』北杜夫/集英社
『神の汚れた手 上・下』曽野綾子/小学館
曽野綾子さんは1929年に『遠来の客たち』で芥川賞候補となりデビューしました。宗教や社会問題などをテーマに幅広い作品を執筆しており、1945年のエッセイ『誰のために愛するか』は200万部のベストセラーとなりました。本書は三浦半島の産婦人科の医師が主人公で、人間誕生の意味とその神秘に鋭く斬り込んだ生命の尊厳を問う衝撃の問題作です。(R.S.)
とある産科医の日常を淡々と描きながら、命をあしらう人間の業を問う。本書が出版された1970年代から令和の今も変わらない「命の尊厳」というテーマ。セレクションという単語に「淘汰」の意味が含まれることに戦慄する。(Y.T.)
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『死すべき定め』アトゥ−ル・ガワンデ/みすず書房
『東京窓景』中野正貴/河出書房新社
中野正貴さんは2000年に人の姿が全く無い東京の風景を撮影した『TOKYO NOBODY』に代表される都市を独自の視点で捉えた作風で知られています。本書は2004年に撮影された東京の写真集で2005年に第30回木村伊兵衛写真賞を受賞しています。部屋の奥から眺める窓の外の写真には生活している方の息遣いなどが感じられて素朴で温かみのある作品になっています。(R.S.)
普段見慣れた東京の風景も「窓」を通すことで別世界のような気持ちにしてくれる1冊。何気ない日常の風景も視点を変えれば掛け替えのない時間となることを教えてくれる作品です。(Y.K)
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『Tokyo style』都築響一/筑摩書房
『空の名前』高橋健司/角川書店
若輩者の私が神保町本店の5階の理工書コーナーを担当していた頃に本書が発売されてベストセラーになった記憶があります。雲や風や季節や天候を「空の名前」として紹介し写真が彩りを添えます。今まで何気なく見ていた風景ですが名前を知ることでより身近に感じられるようになります。情緒豊かで季節感を感じる日本語の「空の名前」に感銘すること間違いなしです。(R.S.)
子猫の写真集以上に心奪われます。古い本ですが、改定第四版を重ねるオールカラーのロングセラーです。空の青さと雲の雄大さ、それに季節を表す豊かな日本語の雲の名前が巣籠の心を晴らします。(T.N.)
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『工場夜景』工場ナイトクル−ズ/二見書房
『旅をする木』星野道夫/文藝春秋
星野道夫さんは写真家です。主にアラスカを中心に野生の動植物やそこで生活する人々の写真を撮って、1989年には「Alaska 極北・生命の地図」で第15回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。本書は1994年の発売なので星野さんが亡くなる直前の刊行ですが、古さは微塵も感じられず、アラスカの風や匂いが感じられます。私たちは動物や自然とつながり孤独と共にあることをこの本は教えてくれます。(R.S.)
常に生と死が隣り合わせの壮大な自然、アラスカ。そこで暮らす動物や人々を美しく、静かな言葉で語る星野さん。効率や経済で動く現代社会から遠く離れた世界を追体験し、価値観を変えてくれる一冊です。(N.I.)
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『漂流』吉村昭/新潮社
『日日是好日』森下典子/新潮社
本書はワクワクやドキドキが止まらないタイプの本ではないのですが、割と一気に読んでしまいます。それだけ人を引き付ける内容と文章なのだと思います。茶道の経験がない私でも読み進むうちに「茶道を習ってみようかなぁ」と考えたりします。お茶は自分と向き合う時間を作ってくれるので人生が豊かになります。本書を読むと1日1日をじっくりと生きて季節の移り変わりや日常の美しさを愛でる気持ちが湧いてきます。(R.S.)
悩み、感覚、自然、身の周りの様々なことをお茶を通して知り理解していくという、作者の体験を綴った話です。文も読みやすくて、自然の音を聞きながら、ちょっと一息したくなった時に読みたくなる本です。(A.S)
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『柿の種』寺田寅彦/岩波書店
『柿の種』寺田寅彦/岩波書店
寺田寅彦は物理学者ですが夏目漱石の弟子としてエッセイや俳句も多く残しています。本書は極上の短文エッセイです。短いからこそ心を打ちます。理系と文系の垣根を越えて何気ない日常の中に不思議な現象を見つけて独り言のように説明するのですが、実に味わいのある文章です。(R.S.)
物理学者「寺田寅彦」の短編エッセイ。「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」の言葉が今だからこそ刺さる・・・。(A.S.)
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『考えるヒント』小林秀雄/文藝春秋
『たいせつなこと』マーガレット・ワイズ・ブラウン(著) 、レナード・ワイスガード(絵) 、うちだややこ(訳)/フレ−ベル館
1949年にアメリカで出版されて以来、読みつがれてきた絵本です。「たいせつなこと」とはなにかを、やさしく詩的な文章で語りかけます。分量は少ないのですぐ読めてしまいますが内容は深いです。小学校低学年向きの児童書といってしまえばそうなのですが、大人が読んでも涙が溢れる場合があるので注意が必要です。こんな本をプレゼントにもらったらいいだろうなあと思わせます。(R.S.)
スプーン、ひなぎく、りんご、かぜ、そら、くつ…。私達の身近にあるそれらにとってたいせつなことは?優しい言葉で紡がれる優しい絵本。では、あなたにとってたいせつなことは?(K)
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『わたしのげぼく』上野そら/アルファポリス
『スープ・レッスン』有賀薫/プレジデント社
スープは凄いと思います。まずメニューにスープが加わるだけで食事にご馳走感が出ます。また他に汁物のライバルはいないのでスープを飲みながら色々なおかずを頂くことになり存在感があります。最後にスープといいながら色々な具材が入っているので栄養があります。
有賀さんはスープ作家で、365日スープを作っていて、日本をスープの国にする野望を抱いているそうです。(R.S.)
驚くほどシンプルな材料。それでこんなにおいしいスープができるなんて!今まで気づかなかった野菜そのもののおいしさに出会える1冊。じっくりと味わって食べるという料理と食の新しい楽しさを教えてくれました。(N.M.)
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『一汁一菜でよいという提案』土井善晴/新潮社
2025年9月3日 更新