本には読んでいる人の心を揺り動かす力があります。心が揺さぶられたり、思わず涙腺が緩んでしまったり、一生に一度出会えることが奇跡のような本を集めたのが「グッとBook!」レーベルです。
『ライオンハート』恩田陸/新潮社
2人の男女の時空を超えた輪廻転生の愛の物語です。「いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。」と主人公が語る本書は、巡りあいながらも結ばれる事のない二人のロマンチックな物語で、とても暖かくて余韻が残ります。(R.S.)
個人的恋愛小説No.1!何度よんでも鳥肌が立つほど感動する。そして何度でも読み返したくなる1冊です。(K.H.)
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『ドミノ』恩田陸/角川書店
『ただいまが、聞きたくて』坂井希久子/KADOKAWA
本書は6作からなる連作短編で一話ごとに視点が変わって語られます。彼氏にふられて非行に走る長女、引きこもりでBL趣味の長女、不倫が発覚して存在感のない父、キャバクラで働くエキセントリックな母という壊れかけた家族が再生していく物語です。著者の坂井さんは登場人物を丁寧に愛情を込めて描いておりとても共感できます。(R.S.)
不器用な一家の崩壊から再生を描いた家族小説です。(K.A.)
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『幸福な食卓』瀬尾まいこ/講談社
『すべての見えない光』アンソニー・ドーア(著)、藤井光(訳)/早川書房
第二次世界大戦という暗い時代に孤児のドイツ人少年と盲目のフランス人の少女の運命的な邂逅を描いた物語は、繊細な美しさや優しさを感じさせます。ハッピーエンドはないですし、悲劇でもないのですが読後の余韻に浸れる心に残る名作です。新潮社のCrest booksは表紙が美しいことでも知られていますが、本書の表紙の写真はロバート・キャパによるものです。ちなみに本書は2015年にピューリッツァー賞(小説部門)を受賞しています。(R.S.)
藤井光さんの翻訳が素晴らしい。海外文学を読んでいるのに改めて日本語の美しさにはっとします。(H.U.)
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『悪童日記』アゴタ・クリストフ/早川書房
『海の見える街』畑野智美/講談社
海の見える街の市立図書館で働く本田は長年片思いだった相手に失恋するのですが、そんな時に契約社員の春香がやってきます。本に興味が無く周囲とぶつかる彼女に翻弄される日々が始まりますが、海の色と季節の変化とともに彼の日常が少しづつ変わり始めます。4人の若者の4つの視点で語られる連作短編集で、繊細な筆致で描かれた等身大の恋愛小説だと思います。(R.S.)
ちょっと大人の恋愛小説です。(K.A.)
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『永い言い訳』西川美和/文藝春秋
『永い言い訳』西川美和/文藝春秋
人気作家の妻と親友が旅先で不慮の事故で亡くなります。残された作家は親友の夫に親友の子供たちの世話を申し出ます。そして妻を亡くした男と母を亡くした子供たちの「新しい家族」の物語が動き始めます。西川美和さんは映画監督で2006年に公開された「ゆれる」が様々な映画賞を受賞しています。本書は2015年に発表され第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補になり2016年に西川さん自身の手で映画化されています。(R.S.)
妻を亡くした後の夫の気持ちの変化や後悔に切ない気持ちになりますが、子供たちとの微笑ましいやりとりには心が和みます。大切な人との今ある日常を蔑ろにしてはいけないと改めて思わせられる、心に残る物語です。(F.M.)
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『火山のふもとで』松家仁之/新潮社
『珠玉』開高健/文藝春秋
開高さんはコピーライターから小説家に転身して1957年に『裸の王様』で第38回芥川賞を受賞します。遅筆で知られそのエピソードとして、芥川賞受賞後に「文學界」(文藝春秋)から依頼された原稿を締切までに書き終わることができず、既に「群像」(講談社)に提出していた原稿を回収してそのまま「文學界」に提出してその場を凌ぎましたが、その後16年間講談社から干されてしまったということがあったそうです。1964年に朝日新聞社の臨時特派員として戦時下のベトナムへ行きルポライターとしても活躍します。そしてルポライターとしての才能が釣り紀行文の金字塔『オーパ』で花開くのです。本書は開高健さんの遺作となった3つの短編を収録しています。アクアマリン、ガーネット、ムーン・ストーン、3つの宝石に托して語られる物語ですが、際限なくイメージを膨らませていくエッセイ風の自伝小説といえばいいでしょうか。表現力が秀逸でどんな出来事も開高健さんの筆にかかれば珠玉になると思われます。(R.S.)
文体からあふれ出る「色彩」「芳香」「陰影」まさに珠玉の3短編。開高健が残した最後の神髄。迫真の「白鳥の歌」(S.T.)
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『みかづき』森絵都/集英社
『百瀬、こっちを向いて。』中田永一/祥伝社
乙一さんは山白朝子や中田永一などの別名義でも活動していた時期がありました。本書は中田永一名義のデビュー作で、発表された当時は著者の中田永一さんは覆面作家という情報しかありませんでしたが、2011年に乙一さんであることが明らかになりました。4編の恋愛短編小説が収められていて「高校生の恋愛っていいな」と年甲斐もなく恋愛スイッチが入ります。(R.S.)
映画化もされた、せつない恋心を描いた恋愛小説です。(K.A.)
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『流浪の月』凪良ゆう/東京創元社
『火山のふもとで』松家仁之/新潮社
本書の題名にある「火山」とは浅間山のことで、この物語は浅間山のふもとの山荘で始まります。浅間山近くの軽井沢は日本有数の避暑地として有名ですが、そんな軽井沢を知っている方にど真ん中なのが本書です。著者の松家仁之さんは大学在学中に一度デビューしましたが、その後出版社に入社して雑誌の編集長などをされた後に退職して本作が再デビュー作となります。山荘を夏の間だけ事務所として使う建築設計事務所で働くことになった主人公の思い出話なのですが、あたかも軽井沢にいるような美しい風景描写に心が休まり穏やかな気持ちになれます。小説を読む喜びを感じられる物語で純文学のお手本のような作品といっても過言ではないでしょう。本好きが他人におすすめしたくなるタイプの小説だと思います。(R.S.)
火山のふもとの山荘で、ゆるやかに、穏やかに描かれる、若き建築家の恋とお仕事。堆く積まれた新刊の山の中から見つけて一目惚れしてしまうという、書店員ならではの出逢いをして以来、著者の大ファンになりました。(S.T.)
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『横道世之介』吉田修一/文藝春秋
『乳房』伊集院静/講談社
伊集院静さんは野球やゴルフが趣味で、麻雀や競馬などギャンブルにも造詣が深いです。作詞家としても活躍していて近藤真彦さんの「愚か者」で1987年に第29回日本レコード大賞を受賞しました。作家としては1992年に『受け月』で第107回芥川賞を受賞しています。伊集院さんはお会いしてみると無頼漢な印象を受けるのですが優しい方で、波乱に富んだ人生を歩んでいるようにも思えます。そんな伊集院さんの人生を切り取ったような短編集です。やさしくて丁寧な文章は淡々としていますが心に沁みます。(R.S.)
『あの子のカーネーション』以降ずっとエッセイを読んでいたのですが、ある時初めて伊集院先生の小説を読み、同じような哀しさを感じました。(M.O.)
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『幸福な食卓』瀬尾まいこ/講談社
『たやすみなさい』岡野大嗣/書肆侃侃房
岡野大嗣さんは2011年に短歌を始めて2014年に歌集『サイレンと犀』を発表した現代短歌の歌人です。本書の短歌は日常の中にあることを独自の視点で捉えて、新しくかつ懐かしいことばの組み合わせで表現しています。この歌集をポケットに入れて散歩に出かけて河原に座って読みたいと思いました。(R.S.)
言葉たちが宝石のようにキラキラと輝いていて魔法のような一冊。日常の断片が彼の魔法にかかるとこんなにも綺麗な言葉になるのか、と驚きました。(N.K.)
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『短歌ください 明日でイエスは2010才篇』穂村弘/KADOKAWA
2025年10月24日 更新