人生を彩る本棚

青春時代の音楽

あの頃の音楽が、今また響く──青春を彩ったJ-POPを本でたどる

「最近、街でよく昔の曲が流れているな」「この曲、親がよく聴いてたかも」──そんなふうに、ふと耳にした音楽が心に残って離れないことはありませんか? 音楽には、その時代の空気や感情がぎゅっと詰め込まれています。学生時代の帰り道、初めて買ったCD、友だちとカラオケで歌ったあの1曲……。そんな青春の断片が、音楽とともに鮮やかによみがえる瞬間があります。 今はサブスクリプションサービスで、クリックひとつで何万曲も聴ける便利な時代。でも、だからこそ当時CDショップで手にしたあの「物理的な音楽」の存在感や、ジャケットに込められた想い、そして曲の背景にあるストーリーが、今になっていっそう愛おしく感じられるのかもしれません。 今回ご紹介するのは、シティポップや90年代J-POP、8cmシングルCDなど、かつての“日本のポップミュージックの黄金時代”を本でたどれる書籍たちです。 音楽は聴くだけでなく、「語る」「知る」「集める」楽しみもある──そんなことに気づかせてくれる一冊に、きっと出会えるはずです。 青春時代の思い出とともに、音楽の旅に出かけてみませんか?

『シティポップとは何か』柴崎祐二、岸野雄一、モーリッツ・ソメ、加藤賢、長谷川陽平/河出書房新社

シティポップとは何か

柴崎祐二,岸野雄一,モーリッツ・ソメ,加藤賢,長谷川陽平

河出書房新社

ISBN: 9784309291604

70年代後半から80年代前半にかけてヒットチャートをにぎわせたシティポップ。かつてCD化されたものの廃盤で入手困難だったタイトルも、現在ではサブスクで容易に聴けるようになりました。音楽配信による物理的な壁の解消は海外でのシティポップ再発見となり、今では世界中でオリジナルの中古盤価格が高騰しているとか。この本はシティポップをより詳しく知りたい人のために、当時の状況から現在の再評価に至るまでを論じた決定版です。

『8cmCDで聴く、平成J-POPディスクガイド「小室」系、「ビーイング」系、「渋谷」系──CDがもっとも売れた90年代の名曲200』 長井英治/DU BOOKS

8cmCDで聴く、平成J-POPディスクガイド「小室」系、「ビーイング」系、「渋谷」系──CDがもっとも売れた90年代の名曲200

長井英治

DU BOOKS

ISBN: 9784866472393

「そういえば昔買ったCDみんな処分しちゃったなあ」。ミリオンセラーが次から次へと生み出された90年代J-POP、今ではサブスクで音源は簡単に聴けますが、あの頃買ったCDは手元にないなんて人も多いのでは。当時のシングル曲は日本独特の短冊型ジャケットに入った8cmシングルCDでリリースされていました。あの細長いジャケットを見ればよみがえる青春の思い出。最近では高額で取引されているコレクターズアイテムもあるそうです。全200枚のジャケットはカラーで掲載、各曲解説つき。

『短冊CDディスクガイド 8cmCDマニアックス――渋谷系、レア・グルーヴ、アイドル、アニメ、テレビ番組、企業ノベルティまで』ディスク百合おん/DU BOOKS

短冊CDディスクガイド 8cmCDマニアックス――渋谷系、レア・グルーヴ、アイドル、アニメ、テレビ番組、企業ノベルティまで

ディスク百合おん

DU BOOKS

ISBN: 9784866472225

こちらはタイトル通りヒット曲に留まらず8cmCDのフォーマットで出されたありとあらゆる作品が紹介されています。売られていた時のビニール包装を取ってしまうと紙のジャケットがむき出しのため、中古市場では美品が少なくなっていますが、この本ではジャケット写真がフルカラーのコート紙に印刷されており、当時の姿がよみがえります。「こんなCDがあったんだ」「これオレ知っている」といった酒の肴にぴったりなディスクガイド。

『J-POP丸かじり』西寺郷太/ソウ・スウィート・パブリッシング

J-POP丸かじり

西寺郷太

ソウ・スウィート・パブリッシング

ISBN: 9784991221156

J-POPの話がしたい! 約500ページに詰め込まれた西寺豪太(ノーナ・リーヴス)のJ-POPについての対談とエッセイ集。WEBサイト「音楽ナタリー」や雑誌「BRUTUS」に掲載されたものに小西康陽、宇多丸(ライムスター)等との新作対談も収録されています。語られるのは昭和、平成、令和のアイドル、アーティストと幅広く、これを読めばJ-POPの歴史が楽しく学べます。

『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』田中絵里菜/朝日出版社

K-POPはなぜ世界を熱くするのか

田中絵里菜

朝日出版社

ISBN: 9784255012124

いつの間にかJ-POPを追い越して世界規模にファンが広がっているK-POP。うちの子たちもなんだかハマっているけど何がいいの?というお父さんたちも多いでしょう。K-POPがここまで成功したのはコンテンツビジネスを後押しする国家戦略と斬新なプロモーション。この本を読めば娘さんの気持ちがわかるだけでなく、新たなビジネスの考え方のヒントも得られるかも知れません。

『東京大学「ボーカロイド音楽論」講義』鮎川ぱて/文藝春秋

東京大学「ボーカロイド音楽論」講義

鮎川ぱて

文藝春秋

ISBN: 9784163913629

初音ミクから始まったボーカロイドという音楽文化。楽器が出来なくても歌が歌えなくてもボカロPとして自分の音楽を作ることが出来るようになりました。そしてネット上で発表することで音楽会社のバイアスがかからない生の声が全世界に発信出来るようにもなりました。発表の場がネットということでおじさん世代がその音楽に触れる機会は少ないように思えますが、米津玄師やYOASOBIといったアーティストも元はボカロPから世に出て来ています。この本は2016年から東大で行われている講義をまとめたもの。ちょっと難しそうな現代思想も出て来ますが、語り口が大学の講義そのままなので読みやすいです。この本の中ではジェンダー論に大きくページが割かれていますが、子ども世代の悩みや生きづらさがどこにあるのかを知る手掛かりになるのでは。

2025年5月30日 更新

記事をシェアする