





2025年8月、戦後80年を迎えます。
戦後どのようなことがあったのか、人々はどのように暮らしていたのか。消して忘れてはならない日本の歴史を“本”を通して学び、これからの未来に繋げていきたい。
三省堂書店の各店文庫担当者が選んだ一冊を紹介いたします。新しい視点や発見があればと思います。
『ぼくもいくさに征くのだけれど』 稲泉 連/中公文庫

23歳で戦死した竹内浩三が生前書き残した数々の詩は、戦後多くの人々を惹きつけています。
本書「ぼくもいくさに征くのだけれど」は竹内浩三の足跡を辿ることによって戦争に対する思いを綴った一冊です。
『雲の墓標』阿川弘之/新潮文庫

一特攻学徒兵・吉野次郎の日記の形をとり、大空に散った彼ら若人たちの姿を描いた作品。「万葉集」を愛して研究していた学生が、戦局の変化や軍隊生活への慣れていくにしたがって徐々に変わっていく様子がとても瑞々しく描かれています。フィクションではあるけれども、とてもリアリティを感じさせる重みのある作品です。
『アウシュヴィッツのタトゥー係』ヘザー・モリス/双葉文庫

第2次世界大戦時の実話に基づいた小説。
同著の主人公である2人はホロコーストを生き抜いて戦後2000年代まで生きており、彼らの平和な時代の写真は同著の最後の方に掲載されています。ホロコースト生存者らの高齢化が進み、当時の様子や真実を伝えられる人も減っています。当時の記憶や経験に基づいた本作は、歴史的にも大切な一冊と言えます。
『虐殺のスイッチ』森達也/ちくま文庫

ナチスのホロコースト、クメール・ルージュの大量殺戮、インドネシア政権による虐殺など、虐殺事件は繰り返しおこっている。なぜごく普通の善良な人々が同じように生きている人を簡単に殺すのか。
命や虐殺といったテーマで作品を世に出し続ける映画監督による、集団が熱狂し変異して起きる虐殺のメカニズムを考える一冊。
2025年7月2日 更新