









本には読んでいる人の心を揺り動かす力があります。心が揺さぶられたり、思わず涙腺が緩んでしまったり、一生に一度出会えることが奇跡のような本を集めたのが「グッとBook!」レーベルです。三省堂書店スタッフのおすすめコメントとともにご紹介。ぜひ日々の本選びにお役立てください。
『優駿 上巻』宮本輝/新潮社
『優駿 下巻』宮本輝/新潮社
北海道の弱小牧場に産まれた競走馬候補「オラシオン」の誕生から日本ダービーに挑戦するまでと取り巻く人たちの人間模様の物語です。馬の飼育や牧場の経営など当たり前の内容に恋愛や友情が上手く散りばめられています。よく練られたストーリー、魅力的な登場人物、美しい場面の数々は宮本輝さんの最高傑作に推す方も多いようです。本書は1987年に第21回吉川英治文学賞を受賞しており1989年にフジテレビ開局30周年記念作品として映画化もされました。(R.S.)
競馬に初めて興味を持った学生時代、そこに広がるドラマを深く深く教えてくれたのは『優駿』。何度も読み返してぼろぼろになった文庫本がいまも宝物です。最近競馬に興味を持った皆様へ。(S.H.)
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『約束』/ロバート・クレイス、高橋恭美子 (訳)
警察犬マギーとスコット巡査の馴れ初めを描いた『容疑者』に続く第2作ですが、ここに著者のコール&パイクシリーズの2人が登場してマギー&スコットと共演し面白さが2倍になっています。読み進むうちにどんどん引き込まれます。ハードボイルドでユーモアもあるコール&パイクも魅力的ですが、やはり一番のスターはマギーなのです。(R.S.)
固い絆で結ばれた人と犬との物語。犬ってなんて素晴らしいんだ。(T.T.)
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『八百万の死にざま』ロ−レンス・ブロック/早川書房 私立探偵小説大賞を受賞した話題の大作。
『太陽の塔』森見登美彦/新潮社
舞台は京都、主人公は京大生ということで、ダサくてキモくて繊細だけど屁理屈をこねる主人公は作者本人ではないかという疑いもあります。深く個性的な文章で、会話にリズムがあるため読んでいて心地よいです。登場人物の造詣が深く、ユーモアたっぷりですが悩みや失恋の悲しみを文学が包み込んで優しい物語になっています。デビュー作にして既に森見ワールド全開です。(R.S.)
読後数年経つと細かい内容は忘れがちですが、先輩のゴンドラ発言は何年経っても鮮明に思い出します。(N.O.)
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『ちょっと今から仕事やめてくる』北川恵海/KADOKAWA
本書にはライトな感じのイメージがありますが、思いがけない感動が待ち構えており、この本に救われた人もたくさんいるのではないでしょうか。ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した主人公は、無意識に線路に飛び込もうしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられます。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらうのですが・・・。スカッとする気持ちよさと穏やかな感動をもたらす1冊です。仕事に悩む人には自己啓発としてもオススメです。なお本書は2017年に映画化もされています。(R.S.)
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『戦場のコックたち』深緑野分/東京創元社
本書は2016年に第154回直木三十五賞候補と第18回大藪春彦賞候補になりました。その他2015年「週刊文春ミステリーベスト10」で第2位、2016年「このミステリーがすごい」でも第2位に入っています。でもミステリー色は弱く真面目な戦争の物語で想像より重たい内容です。第二次世界大戦にアメリカ軍のコック兵として参加したティムが非日常の戦地に身を置きながらも日常に潜む謎を解いていきます。若き兵士たちは友情を育んでいきますが、仲間が次々と命を落としていき。主人公も荒んでいきます。戦争の無意味さや悲惨さに色々考えさせられますが、最後のエピローグでとても胸を打たれます。)(R.S.)
タイトルの”コック”という響きだけで、コックさんがお料理する話かー。と軽い気持ちで読みだしてしまい、そんな気持ちでよんじゃいけなかった。戦場の過酷さや、重さが、胸に来まくる。けど、読み終わって、読んでよかったと思ったし、夢にも出てきた。(E.K.)
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『ルリユール』村山早紀/ポプラ社
村山早紀さんの作品には、不思議が日常になった「風早」という架空の街が登場します。その風早の街でひと夏を過ごすことになった中学生の瑠璃は不思議な女性クラウディアと出会います。彼女はどんなに傷んだ本でも魔法の様に綺麗になおすルリユール職人でした。沖縄が舞台のファンタジーで切ない気持ちと前向きな気持ちをもらえます。(R.S.)
ルリユールとは、本の修復士のこと。本だけでなく、想いも紡ぐ、まるで魔法使いになったようなファンタジー小説。(T.K.)
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『I Love You』伊坂幸太郎,石田衣良,市川拓司,中田永一,中村航,本多孝好/祥伝社
初めて恋心を意識したとき、幼なじみに異性を見出したとき、彼女とのあいだに微妙な心の距離を感じたとき、恋愛には未知の物語があります。伊坂幸太郎さん、石田衣良さん、市川拓司さん、中田永一さん、中村航さん、本多孝好さんの6名の男性作家による奇跡の恋愛アンソロジーです。(R.S.)
同じ作家の同じ作品を何度も繰り返して読んでばかりだった当時、読んだことのない新しい作家さんと出会わせてくれた一冊。運命の出会いでした。(N.K.)
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『ぼくのメジャースプーン』辻村深月/講談社
小学4年生の男の子は特殊な力を持っていて、この力は使いようによっては酷い結果をもたらします。彼は幼馴染の女の子を救うためにこの力を使おうとしますが。同じ能力を持つ先生から命の大切さや罪と罰、倫理観などを学んで難しい問題に真正面から向き合います。登場人物の繊細な気持ちが描かれていて考えさせられます。(R.S.)
心を壊した罪には、どんな罰を与えればイイのだろう?不思議な力を持った少年が、親戚のおじさんと、“ある事件”の犯人にどんな償いをさせるべきかを考える、変化球ミステリ。辻村作品、最初の一冊はコレで決まり!(S.T.)
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『Aではない君と』薬丸岳/講談社
薬丸岳さんは2005年に『天使のナイフ』が第51回江戸川乱歩賞を受賞してデビューしました。社会問題を題材にして少年法などの重いテーマを扱った読み応えのある作品が多いです。本書は中学生の息子が同級生を殺害して逮捕されるという少年犯罪に、トリックやどんでん返しといったミステリ要素を敢えて排除して真正面から取り組んだ意欲作です。ずっしりと重たいですが面白くて考えさせられる内容です。(R.S.)
犯罪加害者の家族を主人公とした小説は数少ない。我が子が殺人を犯したと聞いたらどうする?償いとは?を突き付けられる。苦しみや葛藤が痛いほど伝わってきて、感情が揺さぶられるすごい小説です。(M)
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『プラネタリウムのふたご』いしいしんじ/講談社
幻想的で宮沢賢治の童話のような雰囲気の双子の少年の成長の物語で、とてもゆっくりと話が進みます。温かさと残酷さを持ち合わせていて語り口は柔らかいのに身震いさせるような冷たさもあります。読後にもう一度読みたくなる物語で読書好きの方におすすめです。(R.S.)
星の見えない村のプラネタリウムで拾われたふたごの悲しくもあたたかい物語です。きらきらとやさしい言葉で描かれた童話のような小説で、読んだあとは星を眺めたくなります。(S)
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2025年7月18日 更新